役員報酬を変える手続き
役員報酬の変更手続きの手順
役員報酬は、事業年度開始日から3カ月以内に変更しなくてはいけません。
変更する場合の手順としては、まず株主総会等で役員報酬の変更を決定します。
その際は、必ず「株主総会議事録」を作成し、保存しておきましょう。
ダウンロードはこちら ⇒ 臨時株主総会議事録をダウンロードする
議事録には、出席者や株式総数、役員報酬をいくらに変更するか等を記載し、出席者が署名・押印します。
また、合同会社などの場合は、「株主総会議事録」の代わりに「同意書等」を作成・保存しておく必要があります。
ダウンロードはこちら ⇒ 総社員の同意書をダウンロードする
もし議事録などがなければ、税務調査のときに変更内容を証明することができず、損金算入を否認されることとなり、追加で税金を納める可能性がありますので必ず作成・保存しておくようにしましょう。
また、こうした議事録を作成する以外にも、社会保険に加入している会社は変更後の「標準月額報酬」が2等級以上増減する場合は、日本年金機構へ社会保険料の改定手続きも必要になります。
詳しくは、こちらを参照⇒「社会保険の変更」
なお、定額の役員報酬の変更については税務署への届出は必要ありません。
例)事業年度が4月1日から3月31日のケースで、5月に役員報酬を変更する場合
5月 | 臨時株主総会を開催 ⇒ 役員報酬変更の議事録を作成 |
変更後の役員報酬を支給開始 | |
7月 | 役員報酬を変更し3か月経過後に社会保険料の改定手続き (※必要な場合のみ) |
役員報酬を減額する場合の注意点
役員報酬の変更は、原則として事業年度開始日から3カ月以内に変更しなくてはいけません。
ただし、国税庁は、「法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(業績悪化改定事由)により改定(減額改定に限る)されたもの」に限り、事業年度開始日から3か月経過後に役員報酬を減額することを認めています。
さて、ここで書かれている「業績悪化改定事由」とは、いったいどのようなことをを指すのでしょうか。
国税庁から出されている平成24年4月改訂の「役員給与に関するQ&A」には、以下のような具体例が挙げられています。
- 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から、役員給与の額を、減額せざるを得ない場合。
- 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合。
- 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持、確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合。
- 主力製品に欠陥があることが判明して、今後、多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられない場合。
などです。
とはいえ事業年度の途中での役員報酬の変更は、減額であっても原則は認められていませんので、税務調査で無用な疑いをかけられないためにも、事業年度開始日から3ヶ月以内に変更することをお勧めいたします。
事業年度の途中で役員報酬を増額する場合の注意点
原則、事業年度の途中で役員報酬を増額した場合、その増額分は損金へ算入することはできません。
それはなぜでしょうか?考えてみてください。
答えは・・・
いつでも自由に役員報酬を変更できるとすれば、役員報酬の額を調整することで会社の利益及び税額を調整することが可能となってしまうからです。
例えば、期中に多額の利益が発生することが判明した時に、役員報酬を増額して経費(損金)を増やせば、会社の利益が少なくなり、法人税を減らすことができてしまいます。
役員報酬を増額したい場合は、必ず事業年度開始日から3ヶ月以内に行うようにしましょう。
ただし、損金にならなくても良い(節税しない)と考えるのなら、3か月経過した後でも役員報酬を増額すること自体は可能です。
例えば、事業年度開始日から3か月経過後に毎月50万円の役員報酬を月額70万円に変更した場合、増額した20万円は損金として認められないことになります。
役員報酬は頻繁に変更することができません。
変更するルールと手続きをきちんと考えたうえで、役員報酬額を決めることが最も重要です。
2017年4月18日 12:55 PM|会社の税金